TOP高校生の「建築甲子園」実施・応募要領
高校生の「建築甲子園」

燃えろ!建築甲子園 “地域のくらし-空き家を活かす-” 締切:平成29年10月末日

審査委員長 片山 和俊
建築家、東京藝術大学美術学部建築科名誉教授

第8回も“地域のくらし- 空家を活かす”というテーマで行う。

第1回からの5年間“地域のくらし”を繰り返し進めてきた。多くの真剣な取組みと提案がなされ、各地のくらしが鮮明になり、参加校と学生相互の刺激が生まれ、様々な方面からの応援と賛同が寄せられた。そのまま続けていく選択肢もあったが、再考一新第6回から“空き家を生かす”を加え、闘うフィールドを絞り鮮明にした。それからの2回、素晴らしい提案が数多く寄せられ、参加校も増え、闘いはヒートアップして来ている。

それにしても将来を予測することは難しい。その予測をリアルに感じ取り、受入れることは更に難しい。バラ色の未来の予測ならばまだしも、その逆となると誰でも直視したくないものだ。

けれども私たち日本の未来には、そういう難しい事態が間近に迫っているようである。 その兆候の一つが、最近目にすることが多い空家問題と各地の様々な取組みである。日本の人口問題に眼を向けると、2008年をピークに人口減少に転じ、このまま何も手を打たなければ、2010 年に1億2806万人であった日本の総人口は、2050 年に9700万人となり、今世紀末2100 年には4959 万人、40%まで急減するという厳しい推計が示されている。(※1) こういう予測から見ると、空家は増加し問題は確実に拡大深化していく違いない。

現実は厳しい事態を迎えるだろう。けれども静観していても始まらないことだ。ここで故赤瀬川源平氏が、高齢者の老化現象を「老人力がついてきた」と捉え、プラス思考へ変えたような“逆転の発想”はないものだろうか。空家をマイナス思考で捉え、暗澹たる気持ちに浸っているのではなく、プラスに転じる発想、“空家力がついてきた”と考える。意識を変えて、増加する空家を利用・転用・活用機会が増えると捉える。転居・移住など人が動くイメージも浮かびそうだ。最近、過疎の村に移住し農業を始めた若者が、生産から流通までITを使い成功した例があるという。過疎を逆手にとって昔からの農業に現代の技術をぶつける、面白いではないか。難題・難問に向かっていく、そこから旧来の地域のくらしを、豊かな未来につなげる切っ掛けが開けてくるかも知れないのだ。

もっと長い眼でみれば、人口の増減はどこの国や社会にも起こりうることだ。増減は新陳代謝の一側面である。最近読んだ本の中に、物事が破壊や崩壊に向かって進んでいく過程をエントロピーというとすれば、エントロピーの速度をリカバーし、破壊・崩壊という流れを修復.再生・蘇生へと向かわせる機能シントロピーが生命には備わっているとあった。エントロピーとシントロピーは命に与えられた自然の摂理の両輪であると。(※2)

ここで慌てることなく、若い高校生の君たち一人一人が“空家力”を創出しシントロピーの創造に貢献してみたらどうだろうか。君たちの提案に地域の人たち、いや日本中の人たちがワクワクするような状況が生まれるかも知れない。この未来に立ち向かえるのは、残念ながら私たちの世代ではない。君たちの世代だ。瑞々しい発想と気力に期待し提案を待っている。

参考文献:
(※1)「地方消滅」増田寛也著、中央公論新社
(※2)病気にならない生き方」新谷弘美、サンマーク文庫
※「建築甲子園」は、公益社団法人全国工業高等学校長協会の「ジュニアマイスター制度認定プログラム」です。