公益社団法人 日本建築士会連合会 会長挨拶 | 公益社団法人 日本建築士会連合会

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「社会に応える建築士・各都道府県建築士会を共に支える連合会を」

会長

日本建築士会連合会 第12代会長 古谷誠章

これまで、私は東京建築士会長として、広く国民生活の基盤となる良好な都市環境・地域環境づくり、一人ひとりが生きがいを持って働ける職環境づくり、小さな子どもたちやお年寄りと共に安心して暮らすことのできる住環境づくりのために、建築士が果たすべき社会的使命を十全に発揮できるよう、会員の諸活動を支援するための体制づくりに努めてきました。連合会会長を拝命した今、それをさらに拡げて47都道府県の建築士会、7つブロックの活動を支援すべく、日常的に緊密な交流を図り、全国のレベルでの連携協力に発展させてまいりたいと思います。

日本全国、北は北海道から南は九州・沖縄まで、またオホーツク海や太平洋から日本海・東シナ海に面する地方や瀬戸内地方など多様な気候風土を有し、さらに海沿いから山地まで実に多彩な海と森の環境と地域の文化を持ち、その歴史や自然に根ざした様々な建築士の活動が展開されています。幸い私はこれまでにも各種大会や講演、建築賞の継続的な審査などを通じて、多くの地方・地域において、各地の建築士の方々と交流を図らせていただきました。

そうした中で、互いに各地の直面する課題を知り、それぞれの地域の再生を図る上での可能性を議論し、知恵を共有することの大切さを痛感しています。全国各ブロック間の緊密な交流の一層の促進、恒常化を図ることが連合会の使命であると考え、私たちの担うべき豊かで強靭な構築環境(Built Environment)づくりに繋げてまいりたいと思います。
折しも本年元日には令和6年能登半島地震が発生し、大きな被害をもたらしました。自然災害の多いわが国とはいえ、今更ながらに過去の教訓を活かしきれない、知恵の継承の難しさを再認識せざるを得ません。これまで以上の覚悟を持って、国民が求め社会が求める頼りがいのある建築士会の確立に尽力したいと思います。

中期的な課題に対して近角真一前会長の大きな方針(新たな会員層の獲得/災害復旧力/計画段階での発注者支援/新たな業務領域に必要な技術力/全国で協働する地域貢献など)を引き継ぎつつ、その上で都道府県やブロックを超えて連合会全体で、今後特に力を入れて取り組むべき具体的な目標として、以下の5項目を挙げたいと思います。

  1. オンライン・オフラインを通じた、全国レベルで有用な情報の迅速共有のためのネットワーク構築
  2. 人の命と暮らしを守る事前復興ビジョンづくりのさらなる研究・実践
  3. 新たなる建築士像を拓く、創発型の地域貢献委員会(まちづくり・青年・女性委員会など)の積極的な支援
  4. 歴史的なリソースを含む既存ストック活用型の都市・地域づくりの実践に向けての支援体制の確立
  5. 新規会員の入会のモチベーションにつながる、未知の領域・人材との交流の場づくり

連合会が健全に機能し、各都道府県の建築士会の会員が思う存分に活躍するためには、会勢の維持・増強は最も重要な課題であります。しかしそれだけを目的に対症療法的なカンフル剤を打ち続けることはできません。上記の5項目が総合的に作用して初めて、人は集まってくることと思います。そのためにまず心掛けたいのが、全国の会員建築士がそれぞれ互いに全員と知り合うぐらいの目標を持って、一層の交流や、知恵の交換のための土俵を築きたいと思います。幸い新型コロナ蔓延中に飛躍的に進歩したオンラインでの交流の手法を活かして、有益で実りある情報交換の機会を確実に増やしていきたいと思います。

次にこの度の地震災害でも明らかなように、個々の災害の教訓を生かして、次なる災害の被害を最小化する事前復興をさらに進める必要があります。地元行政とも緊密な関係を結ぶことの出来る建築士会の特性を発揮して、日頃から地域の強靭化に貢献することが、若い世代とも一体感を醸成する有効な道筋であると考えます。

さらに地域に直接貢献する委員会である、まちづくり、青年、女性の各委員会を、全国からの建築士が連携する代表的な委員会と位置付け、まちづくり委員会は防災や災害とも連携して地域の将来を見据える委員会に、一方、青年と女性の各委員会は、既成のテーマにとどまらず、それぞれの視点から常に次世代を見つめて新たな問題を提起する委員会として活躍できるように支援したいと考えます。

その上で歴史的な建造物を含む既存のストックを活かす都市づくり・地域づくりを呼びかけ、実践のノウハウを蓄積し、連合会が個々の建築士や建築士会の活動の支援を行うために、そのプラットフォームの構築に着手したいと思います。

以上に加えて、喫緊の課題である「脱炭素建築モデル」づくりについては、日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会の設計3会に、日本建築学会、日本建設業連合会を加えた建築5会のタスクフォースを通じて、今後は具体的な検討を加速させ、できるだけ早い時期に検討案を提示できるよう努めて参りたいと思います。

建築士会の諸活動が全体で一つの大きな輪を描くように、相互に連関しながら総合的に立ち上がり、軌道に乗りつつある過程で、必ずや新たな人々の参加や、これまでに見聞きしたことのない知見に触れる魅力が生まれ、新規会員の獲得、会勢の拡大につながるものと確信します。

及ばずながら、この私が会員諸兄姉の期待に応え、会長として連合会の運営に微力を尽くすことができますよう、今後とも皆様のご支援を賜りますよう、どうぞよろしくお願いいたします。