高校生の「建築甲子園」実施・応募要領
燃えろ!建築甲子園 “地域のくらし”
審査委員長 片山 和俊/建築家、東京藝術大学美術学部建築科名誉教授
古いことだろうか。
一人で自由な気ままな生活が送れる現代に、“地域のくらし”とはどういうことだろうか。ウェブやスーパーがあればそこそこ生活ができるのに、である。
けれどもどんな住まい方をしようと、人が住むところには地域がついて回る。朝目が覚めて窓から眺める景色、玄関を出て広がる町や自然の様子は、それぞれに特有なものである。地域によって人や食べ物、生活手段が違い、音や空気、匂いが違う。どんな生活感やスタイルを持とうとも、生きている限りついて離れないのが暮らす場所、地域の物的・人的環境である。ある人はその環境に愛着をもち、ある人はそこから抜け出したいと考える。同じように見える地域にも人それぞれの異なる暮らしがあり、遠く離れた場所にありながら理解し共感できるのも地域の暮らしである。
振り返って見ると現代に至る都市化のプロセスは、かってあった日本各地の暮らしや豊かな個性に彩られた地域らしさを失ってきた歴史と言えなくもない。日本のどこに行っても同じような町や建物が増え、その町らしい風景や暮らしの生き生きとした姿を見ることが少なくなってしまった。そして様々な事件やひずみ、格差などの社会的な問題が起きる度に、家族や地域から孤立して暮らす個の生活とその危うさが透けて見えてくる。いや逆だ。家族や地域があれば、そういう問題を未然に防げ、救えたのにという思いに駆られることが多いではないか。
あれば鬱陶しく、無ければ寂しい“地域の暮らし”、それをここで見直してみよう。昔の束縛の強いものではなく、もっと自由でわくわくするような“地域の暮らし”の現在と未来が考えられないだろうか。その中に建築があればよいが、建築にこだわらなくても良いかも知れない。豊かな地域の暮らしがイメージできれば建築は後からついてくるに違いないからだ。
昨年の第1回高校生の建築甲子園は、全国から34校の参加を得て、無事に終えることができた。成功した人もあれば、敗北に涙したチームもあったに違いない。勝ち負けは別として良かったことは、これまで自分の廻りしか知らなかった高校生たちが、互いの考えや同世代の広がりを知ったことではないだろうか。地域のくらしは自分たちだけの問題ではないこと、同時に面白い発想や表現をするライバルが結構いることも実感しただろう。審査した我々も、今時の高校生も結構やるじゃないかという思いを新たにした。
今年のテーマは昨年と同じである。変える必要がないほど本質的な課題であり、更なる試みや展開を見てみたい。2回目の今年は、はじめての昨年より難しいかも知れない。名探偵ポアロの灰色の脳細胞ではないが、君たちの若い感性と疲れを知らない手と体を動かせば昨年を越える“地域のくらし”への提案が生み出せるに違いない。期待して待っています。
あらためてこの度の東日本大震災で被災された方や関係の方々に、心からのお見舞いを申し上げます。この未曾有の災害にあっても、先人たちが営々として築いてきた「地域とくらし」を想い、力を合わせてこの困難を乗り越えていきましょう。
1.応募対象者
建築教育課程のある工業高校・高等学校を対象とし、教員が監督、同校在学生を選手としたチーム編成での応募とします。
2.応募要領
提案書は次の要領でまとめ提出ください。
皆さんが家族や兄弟と、あるいは一人で暮らす住まいを提案してください。
現在の住宅を建て替える場合や新たな敷地を求めて建てる場合もあるでしょう。
また、何家族かとともに暮らす場合もあるでしょう。
いずれの場合も住まいのある地域の歴史、環境、景観など地域性の理解を深め記述と図面によって地域と住まいの関係について語ってください。
住まいのデザインについては、簡潔な図面と文章によって説明してください。そこで繰り広げられる暮らしがイメージできる表現を求めます。
今回のコンペ、建築の甲子園では、皆さんが育ってきた住まいと家族、地域の人々・環境との関係性についての記述やそこから生まれる建築設計を重視しています。地域の記述とすまいの提案についての比重の掛け方や表現方法は皆さんにお任せいたします。敷地設定も実際のお住まいの地域を原則としますが、皆さんの希望や期待を込めた想定のもとでの設定も可とします。
以下の提案ボリュームモデルを参考に創意工夫ある提案をお願いいたします。
参考 提出書類ボリューム
☆以下に参考として挙げますが、表現したい内容により自由に考えてください。
●地域の記述
図面:近隣説明図・景観特徴説明図
記述:2,000字程度を限度とします
●すまいの提案
建築概要:構造・規模
面積表
概算建築費(想定単価からの概算で結構です)
工事要旨:新築・増改築など
図 面:配置図・平面・立面・断面図 1:100程度
スケッチ(付近の景観が分るもの・表現したい部分)数点
設計要旨:2000字程度を限度とします
3.応募作品の提出について
3‐1 提出作品
・作品の提出は、各校で選抜してください。
・応募点数は、1校3点以内とします。
・作品は、スチレンボードや紙製ボード等を使用し、最終的にA1判横使い(A2判2枚またはA3判4枚の貼り合わせで可)パネル1枚になるように取りまとめてください。ただし、額装は不要です。
・模型がある場合は、写真にして組み入れてください。
3‐2 提出期限
・平成23年10月末日
・郵送の場合は当日の消印有効とします。
・持参する場合は、土・日・休日を除く午前10時~午後5時迄とします。
3‐3提出先
学校所在地の都道府県建築士会
3‐4 提出方法
連合会または建築士会のホームページにある所定の応募申込書(A-4版の用紙)と返信用ハガキを封筒に入れ、応募作品と一緒に提出してください。
3‐5 質疑応答
質疑応答は行いません。
4.審 査
4‐1 審査の流れ
応募された作品は、先ず、県大会予選(都道府県建築士会単位での審査)を行います。
県大会予選で選抜された作品が全国選手権大会(連合会の審査)へ提出されます。
4‐2 全国選手権大会審査員会
審査委員長 片山和俊(東京藝術大学)
審査員 衛藤照夫(ゆう建築設計)
定行まり子(日本女子大学)
豊永信博(南栄開発)
5.賞及び入賞発表
5‐1 入賞及び賞金
①優勝1点 7万円
②準優勝1点、5万円
③ベスト8(①、②を除く6校)、3万円
④審査委員長特別賞、2万円
⑤奨励賞(全国選手権出場全校) 1万円
各賞に応じて賞状を監督、選手全員に贈ります。賞金を受賞チームへ贈ります。
5‐2 入賞発表
平成23年12月(予定)。
審査結果については、入賞作品集を全国の工業高校等へ送るとともに、本会及び建築士会ホームページ、業界紙、一般建築雑誌等に公表する予定です。
5‐3表彰
全国選手権優勝校には、全国選手権大会審査委員長が出向いて賞状を授与します。
県大会の表彰は、各建築士会が行います。
6. 応募作品の返却
ご希望により応募作品を着払い宅配便で返却いたします。返却に要する費用は申込者の負担とさせていただきます。
7. 著作権
入賞作品の著作権は入賞者に帰属しますが、本会が競技に関する公表(ホームページ、出版を含む)をする場合は、その権利を無償にて使用できるものとします。
8. お問い合わせ先
(社)日本建築士会連合会 建築甲子園事務局(担当:事業部/阪本・山田)
TEL 03-3456-2061 FAX 03-3456-2067
mail jigyo1@kenchikushikai.or.jp
http://www.kenchikushikai.or.jp/
※高校生の建築甲子園は、財団法人建築技術教育普及センターによる平成23年度第1回普及事業助成の対象です。