適正な設計期間の確保
設計図書に不整合が発生する要因の一つとして「設計期間が短い」という声がある。
建設工期については一定の目安が示されているが、設計期間については一般的に認知された目安が存在しない。過去の経験や類似案件の実績に基づきスケジュールが設定される場合があると同時に、事業計画や補助金等の関係から設計期間が決定される場合もある。
これまでは関係者の継続的な深夜残業や休日出勤等に負っていた面もあるが、働き方改革以降ではそれを前提にはできない。
そこで、設計工程を各段階の設計業務の積み上げにより組み立て、それを実行するための「10の提言」を示す。
これに基づき、適正な設計期間の設定・確保に取り組んでいくことが必要である。
建設工期については一定の目安が示されているが、設計期間については一般的に認知された目安が存在しない。過去の経験や類似案件の実績に基づきスケジュールが設定される場合があると同時に、事業計画や補助金等の関係から設計期間が決定される場合もある。
これまでは関係者の継続的な深夜残業や休日出勤等に負っていた面もあるが、働き方改革以降ではそれを前提にはできない。
そこで、設計工程を各段階の設計業務の積み上げにより組み立て、それを実行するための「10の提言」を示す。
これに基づき、適正な設計期間の設定・確保に取り組んでいくことが必要である。
4.1設計期間~発注者の要求との関係
4.1.1設計期間に起因する課題
- 「設計期間が足りない」
:設計スケジュール=通例、同規模・同等用途の実績と、計画固有の法令条件や外部要因等に則り、作成・提示がされている。
:建設工期=「建築工事適正工期算定プログラム(2016年・一般社団法人 日本建設業連合会)」の公表がされている。
:全国営繕主管課長会議「働き方改革に配慮した公共建築設計業務委託のためのガイドライン(2020年10月)」=適当と考えられる設計業務履行期間。
4.1.2実案件での設計期間の実態
- 実案件での実績調査(民間。設計時期=2012年~2018年。延面積2,700~20,000㎡の業務施設、教育施設等)
:延面積10,000㎡・基本+実施設計期間=13ヵ月程度。従来の実案件での「設計期間の一定の目安」と仮定。
4.1.3モデル建物での設計工程の組み立て検証
- 基本設計期間=4.5ヵ月:定例会議9回(2回/月)。全体計画、ASEM計画、コスト計画。
- 実施設計期間=8.5ヵ月:定例会議8回(1回/月)。一般図・詳細図作成、設計概算、確認申請。
4.1.4適正な設計期間の確保 ~「働き方改革」の取り組み~
適正な設計工程表を組み立てるための「10の提言」
1 与条件の確実な確認
・企画段階での与条件整理の確実な実施(事業計画に関する情報。敷地に関する情報)2 申請スケジュールの確実な調査
・建築確認申請・各種条例手続きに必要な期間の厳密な調査・把握(自治体毎の違いに注意)。・発注者の積極的協力が不可欠(発注条件自体への影響大)。
3 発注者の意思決定プロセスの確認
・設計定例会議への決定権者参画の有無による設計期間の違いに注意。4 基本設計期間の設定
・企画段階で整理された発注者要望を基本性能に置き換え、図面・仕様概要を作成し「基本設計図書」にまとめる期間。・基本設計終盤でのデザイン・レビュー(基本DR)の実施。
5 実施設計期間の設定
・基本設計段階で発注者と合意した基本性能設定に基づき、実施設計段階は仕様を確定させ、発注用「設計図書」を作成する期間。6 実施設計初期に後戻りのない平面図等を確定する……プラン確定
・実施設計初期段階で、ASEM 間の取合い詳細検討。・プラン確定段階時での、デザイン・レビュー(実施DR)の設定(その後の手戻り防止)。
7 実施設計後半に図面調整期間を確保する
・ASEM各分野の図面完成後での「検図」と、その調整期間の確保。8 実施設計段階での変更を避ける
・実施設計開始以降の与条件・基本性能変更は大きな手戻りとなり、設計期間を圧迫し、不整合の大きな要因となることの理解。9 建築確認申請及び実施設計概算を滞りなく進める
・詳細図作成と並行しての、建築確認申請の事前協議・書類作成の作成(申請業務を滞りなく進める)。・図面完成後の実施設計概算の実行及び、コスト調整後の見積用図面完成期間の確保。
10 「+α」~働き方改革のための適正化期間+その他の調整期間
・設計各段階での作業期間の妥当性の十分な吟味と、適正化を図る努力の継続。以上の提言を参考にして、発注者の理解を得ながらのスケジュール設定に活用願いたい。
なお、公共工事の場合は、「数量積算期間」が必要となることも付記しておく。
出典:「設計図書整合性向上ガイドブック」 発行:日本建築士会連合会(2020年6月)