設計コンペ勝利への道
第4回高校生の「建築甲子園」審査風景から
先般、「建築甲子園」の審査をする機会を得ました。様々な地域を勝ち抜いて来た「作品」はいずれも「力作」ばかりでしたが、各作品を比較し選抜して行く過程の中で、明らかに審査に影響を及ぼすであろう事柄があることに気づきました。
良い印象を与えるもの、よくわかる内容のものなどは当然、選択される作品になるのですが、どうしたらそういうものになるのかを、今後参加される高校生のために少しでも参考になればとの思いで、少し整理し、お知らせしておこうと思います。
『建築の設計競技』では、第一印象がとても重要なことといえます。それは、審査員にインパクトを与えることです。審査員は前もって、参加の作品を事前資料として目を通してはいるのですが、制作者ほどそれぞれの作品に(参加作品が多ければ多いほど)時間をかけて審査していることは不可能です。ですから、一目で読み取れる表現(文字や図など)が重要となってくるのです。
次に、表現する内容についてですが、①創造性(提案)、②場所性(地域、自然や環境)、③時代性(社会)などのそれぞれが明確に表現されていることが大事なことといえます。
①提案をはっきりする。「何が最も言いたいのか」がはっきりと訴えている「提案」が必要です。計画地の調査や分析は重要な要素ですが、それに体力を使い過ぎ、提案をしているのですが、その表現が薄く、また、たどりついていないというのが数多くありました。はっきりとインパクトのある表現で「提案」をするべきなのです。
②場を示す。地域という場には、その土地ならではの文化や歴史などがあります。それを審査する人たちに自分なりにしっかりした調査や分析したことを伝えることも必要です。審査員はその場を理解しているとは限らないからです。その「場」ならではの自然や環境の付き合い方も「提案」のなかに組み込まれていることが必要なことだからです。また、問題点を明らかにしておくことも不可欠です。地域(現地)の調査を行い、分析整理しているのだが、今回の審査作品でも、問題点を浮き彫りにしていないという傾向が多くみられます。課題をしっかり掴んでおいておかないと「提案」が曖昧になってしまうのです。
③今という時代を感じ、社会ニーズに答える。超高層のビルは江戸時代には建設されていない。これは、必要な床面積が限られた空間で求められていなかったこと、それをつくるための技術がなかったことなどを考えれば理解できる。今の時代が求め、社会が合意できるものをつくることも重要な観点です。また、一方では景観といったこれからの市民社会のなかで不可欠な要素も勘案しておくことも大事なことといえます。
以上、審査会場で感じたことですが、最後に、一言、ある種のテクニックをお教えします。建築をつくっているということを忘れないで頂きたいのです。空間を表現する方法に図面やパースなどがありますが、最も端的のそのイメージや力量が伝わるものに、断面図があります。テレビの料理番組でおいしそうに見せる為によくあるのが、出来たての料理を包丁で切断し、その断面を見せ、ジューシー感などを視覚化させているのがありますが、それと同じかも知れません。美しい建築は、美しい空間を持っています。すなわち、よく考えられた美しい断面を持っているのです。結構、審査の際、効果があることになっているのです。
森崎輝行(建築家)