専攻建築士制度の概要 | 公益社団法人 日本建築士会連合会

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すべての建築士のための制度になりました

はじめに
専攻建築士制度は、消費者保護の視点に立ち、高度化し、かつ多様化する社会ニーズに応えるため、専門分化した建築士の専攻領域及び専門分野を表示することで、建築士の責任の明確化を図る目的の自主的な制度です。

1 8つの専攻領域
2 専門分野表示
3 申請対象者と専攻種別
4 専攻建築士の審査基準
5 申請から登録までの流れ
6 登録
7 費用
8 ホームページでの専攻建築士検索
9 専攻建築士の社会的メリット

専攻建築士制度の概要

1 8つの専攻領域

専攻建築士の名称・区分は右の8領域とし、実務実績により複数表示することができます。 あわせて、専門分野 (得意分野) を表示することができます。

8つの専攻領域
まちづくり専攻建築士
①都市デザイン、都市計画に係わる業務開発事業、区画整理・再開発等の具体的プロジェクト、または、都市・まちづくりの企画、調査等のコンサルタントに関わる業務
②地域の住民やNPO団体等による景観保存・ まちおこ し運動・ 地域貢献活動等に対する専門家としての巾広い支援活動
統括設計専攻建築士
建築士免許を必要とする建築の設計及び工事監理等に係わる業務。一般に、建築設計事務所、建設会社の設計部門等で「建築設計者」「技術スタッフ」等として従事している者。その他、官庁・地方自治体・公共団体や民間企業で、設計・工事監理等に従事している者も含む。「APECアーキテクト」は申請に基づき認定される。
構造設計専攻建築士
建築士免許を必要とする建築の構造設計及びその工事監理等に係わる業務。
「1級建築士」を対象とする。 「構造計算適合性判定員」・「構造設計一級建築士」・「JSCA建築構造士」・「APECエンジニア (構造)」は、 申請に基づき認定される。
設備設計専攻建築士
建築士免許を必要とする建築の設備設計及びその工事監理等に係わる業務。「1級建築士」又は「建築設備士」資格を持つ「2級・木造建築士」を対象とする。(実務経歴年数5年は、いずれか早い資格取得から算定する)
建築士免許を持つ「JABMEEシニア」・「設備設計一級建築士」は、申請に基づき認定される。
建築生産専攻建築士
建築施工関連分野(現場の施工管理、積算・CM、建築リニューアル・維持管理等) に係わる業務。1級の 「施工管理技士」資格を持つ建築士の実務経歴年数は、いずれか早い資格取得から算定する。建築士免許を持つ「建築積算士」「建築コスト管理士」で、日本建築積算協会の会員は、申請に基づき「積算」に認定される。ストック関連団体の資格を持つ建築±は、申請に基づき「診断・改修」に認定される。
棟梁専攻建築士
①日本の伝統木造技術を継承し、その技術のもとに伝統建築 (社寺建築、数奇屋等)の建築生産全体を統括しつつ、設計・工事監理及び施工(木工技能)を行なう業務
②日本の伝統木造技術の基礎となる規矩術や木組みの架構技術を修得し、その技術を現代建築に活かし、 木造住宅をはじめ、学校や福祉施設等の設計・工事監理、及び施工 (木工技能) を行なう業務
以上①又は②の業務を行い、且つ後進の指導にあたる立場の者。
法令専攻建築士
次の実績を持つ1級建築士。法令の策定、建築確認、住宅性能評価等に係わる業務。裁判所、行政機関、建築士会等に対する技術的・法的立場からの支援業務又は活動 (裁判所支援:民事調停委員、民事鑑定委員、 民事鑑定人、行政支援健築工事紛争委員会委員、建築士審査会、建築審査会、建築士会の建物相談(法令に関する) 等の実績。)。「建築基準適合判定資格者」「建築主事資格試験合格者」は申請に基づき認定される。
教育・研究専攻建築士
教育機関 (工業高校、高等専門学校、専門学校、大学等)において、建築に関する教育、訓練等の業務又は、研究・調査・開発機関 (大学を含む) 及び企業の研究開発部門等で、特定の専門分野の研究開発等の業務。 「建築士」免許資格者を対象とする。

2 専門分野表示

専門分野表示は、消費者から見て「表示があった方が分かりやすい」という視点から設けることを原則としています。専門分野表示は、業務内容を狭める側面もあるので、全ての者が専門分野表示をする必要はありません。

専攻領域 専門分野
まちづくり 都市デザイン、景観計画、都市計画、再開発、区画整理、ユニバーサルデザイン、防災まちづくり、まちづくりコーディネーター、まちづくりアドバイザー、街並み保存・修景、まちづくり行政、歴史的建造物保存活用、既存住宅状況調査
統括設計 戸建住宅、集合住宅、医療施設、福祉施設、教育施設、生産施設、商業施設、業務施設、文化施設、宗教施設、交通施設、宿泊施設、物流施設、スポーツ施設、漁業関連施設、農業関連施設、社寺建築、数奇屋造、伝統建築保護修復、ランドスケープ、ファシリティマネージメント、プロジェクトマネージメント、コンストラクションマネージメント、積算、リフォーム、診断・改修、歴史的建造物保存活用、中大規模木造建築、既存住宅状況調査
構造設計 耐震診断・補強、歴史的建造物保存活用、中大規模木造建築、既存住宅状況調査
設備設計 空調設備、給排水衛生設備、電気設備、省エネルギー、情報システム、歴史的建造物保存活用、既存住宅状況調査
建築生産 建築施工管理、設備施工管理、積算(*1)診断・改修(*2)、工事監理、戸建住宅、集合住宅、維持管理、リフォーム、アスベスト診断・改修、プレカット、コンストラクションマネージメント、鉄骨工作図、確認申請代行、鑑定書等作成、歴史的建造物保存活用、中大規模木造建築、既存住宅状況調査
棟梁 社寺仏閣建築、数奇屋造、伝統型木造住宅、古民家診断・改修・再生等、茅葺合掌造改修、歴史的建造物保存活用、既存住宅状況調査
法令 建築確認・検査、性能評価、保証検査、建築紛争調停、特定行政庁等業務、建築相談、鑑定書等作成、歴史的建造物保存活用、中大規模木造建築
教育研究 設計、構造、環境設備、材料・施工、福祉工学、建築計画、都市計画、建築史、歴史的建造物保存活用、中大規模木造建築

*1 必要資格:〔積算〕「建築積算士」「建築コスト管理士」(日本建築積算協会)を持つ建築士
*2 必要資格:〔診断・改修〕特殊建築物等調査資格者(日本建築防災協会}、建築設餉検査資格者(日本建築設備・昇降機センター)、建築仕上診断技術者(建築設箭維昔寺保全推進協会:BELCA)、建築設備診断技術者(BELCA)、建築・設備総合管理後術者(BELCA)を持つ建築士

3 申請対象者と専攻種別

申請対象となる建築士

建築士免許取得後、必要実務経歴年数と責任ある立場での実務実績が3件以上あり、かつCPD履修単位登録を行った者。

専攻領域 対象建築士資格等 必要実務経歴 年数 実務実績件数 必要CPD単位  実務経歴・実績に代えることのできる協定団体等の資格
まちづくり 建築士 建築士免許取得後
5年の経歴

実務実績3件以上

直近1年のCPD 12単位
統括設計 建築士 ・「APECアーキテクト」
構造設計 1級建築士 ・「APECエンジニア(構造)」
・日本建築構造技術者協会「JSCA建築構造士」
・「構造計算適合性判定員」・「構造設計一級建築士」
設備設計 建築士 ・建築設備技術者協会「JABMEEシニア」
・「設備設計一級建築士」
建築生産 建築士 ・日本建築積算協会「建築積算士」「建築コスト管理士」
・ストック3 団体「5資格」
棟梁 建築士 ・日本伝統建築技術保存会「正会員」
・「日本伝統建築技能者」
法令 1級建築士 ・「建築基準適合判定資格者」
教育研究 建築士

4 専攻建築士の審査基準

専攻建築士の審査基準

専攻建築士になるための要件は、
「CPD」を実施し、申請年の前年の1月1日から申請年の12月31日までに取得した単位を12単位以上有していること
②「建築士資格取得後の専攻領域の実務経歴年数が5年以上あること』
③ 「当該領域の責任ある立場での実務実績」(要第三者による証明)
が3件以上あること。


5 申請から登録までの流れ

建築士会審査会が2月、連合会認定評議会は3月に開催されます。認定評議会に間に合うようにスケジュールが設定されます。
詳細は建築士会にお問い合わせください。

6 登録

登録

専攻建築士に認定されると、専攻建築士登録簿に掲載され、「登録証」が交付されます。


登録更新

1.CPD60単位を確認

・5年60単位必要です(詳細は各建築士会へお問い合わせください)。
・1 年間 に取得できるCPDの単位の上限はありません。

2.CPD単位取得の特例

・登録更新の申請時点に専攻建築士認定後10年を超える申請者は、建築士法第22条の2に定められた定期講習又は建設業法26条2項に基づく本会が実施する監理技術者講習、建築士法第22条の4第5項に定められた研修のいずれかを受講し、6単位以上のCPD単位を取得することをもって更新が可能です。


■専攻建築士経歴者証

・定年等の理由で実務の一線を退いた「専攻建築士」のために「専攻建築士経歴者証」を交付します。ベテランの知恵を生涯専攻建築士としてご活躍下さい。

7 費用

各建築士会へお問い合わせください。

8 ホームページでの専攻建築士検索

ホームページでの専攻建築士検索

全国の専攻建築士を都道府県毎に検索ができます。認定者のポートフォリオも、信頼できる建築士へのアクセス窓口として公開いたします。

■ ポートフォリオの公開

「責任ある立場の実務実績」をポートフォリオとして公開することができます。

■ ホームページで専攻建築士を検索

全国の専攻建築士を都道府県毎にWeb検索ができるようになります。

ホームページで専攻建築士を検索

9 専攻建築士の社会的メリット

この制度は、消費者保護を目的に始まった制度ですので、先ず、自ら専攻建築士を仕事に活用して頂きたいと考えています。専攻建築士は座してメリットを待つのでなく、積極的に仕事に活用し、社会・消費者から信頼を得られる様に広めていきましょう。また、本制度を活用して成功した事例を建築士会に寄せて下さい。

■ 社会・市民にとって

建築士のより詳細な情報が開示されることにより、建築士の仕事、その役割や責任は何か、多様な専門家の位置づけも明確になり、建築全体への社会の理解が深まり、建築±への信頼も高まります。 又、「専攻建築士」の顕在化は、「一定レベルの能力と、実績のない建築士」との区別・淘汰が始まり、「良貨が悪貨を駆逐する」ことに繋がります。その結果、欠陥建築の逓減を図ることができます。

■ 発注者にとって

努力・研鑚し、仕事のできる建築士=「専攻建築士」が明確になり、発注者は「優良な建築士」を選択しやすくなります。設計や工事の発注等で、人の質の確保を図ることができ・ 結果「建築の質」を担保することになります。又、多様な専門家φ役割と責任が明確になるので、発注者が望む目的に適した専門家を選択することで、発注時の誤解やミスマッチを防止することができます。

■ 雇用者にとって

「質の高い建築士」を雇用し、社員の技術レベルの維持向上を図ることは、企業の事業成果を高めると共に「人材育成の取組姿勢」が社会から評価されることになります。仕事を受ける際の業務体制表等で 「CPDの研修記録」や「各領域の専攻建築士」を表示する積極的な情報開示は、顧客からの信頼性が高まります。

■ 建築士にとって

役割と責任を明示することは、建築士業務への発注者の理解が深まり、無用な衝突や論争を避けることができます。第三者による「CPD」や「実務実績」の証明により、信頼を得やすくなり、自らを有利に売り込むことができます。「CPD」の記録と登録により、研修や仕事の履歴が蓄積され能力開発の目安も得ることができ、かつPRのためのポートフォリオの作成も可能です。結果として、「信頼のおける建築士」として、 活用される機会が増えます。

専攻建築士の社会的メリット