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「建築士」はどのように読まれているか ―モニターアンケートにみる読まれ方―

大川 陸(編集部会、東京建築士会)

建築士会会員が多様な属性をもっていることはいうまでもない。今回のアンケートの回答者で見ても、設計・監理に携わる者が6割強を占めるものの、経営、構造設計、現場管理など業務分類上は14の分野にわたっている。当然、1級、2級、木造の別、男女という性差、年齢の差、所属する事業所の規模差、身分そして地域差などがあるため、平均的な会員像というものを想定することは困難であり、編集の立場からは読者像の想定が困難という宿命をもっている。
今回のアンケートは、会員の期待する記事は何かを探るという形で「建築士」の方向付けの資料を得ようとするもので、今後ともモニター会員、ホームページとの連携を図りながら、会員に支持される機関誌を目指していきたいと考えている。
以下アンケートの結果を示しながら、考察を加える。アンケートは1,000票強の配信に対し回答数は272票(25.2%)である。対象は平成9年1月号~10年6月号の記事内容についてである。

1. 表紙「四季住景」が一番人気

図1:ジャンル別の購読状況

「よく読む」という回答の多かったのは、「四季住景」と題する表紙とその解説で、99票(36%)、「時々読む」を加えると8割の比率となる。地域に根差した歴史的建築物を全国まんべんなく調査された安藤邦廣先生の力作で、玄人はだしの写真術、専門的な要領を得た解説が広く支持されている。まさに刷新「建築士」の顔としての役割を果たしていただいた。しかし、「あまり読まない」54票(20%)も気になる。どの記事でも「あまり読まない」は2~3割はあるので、関心のあるところを読む、ということの裏返しが表れているのであろう。

CPDに関係する「連載講座」はこれに次いで読まれており、「あまり読まない」の比率は最も低い。ついで「ニュースクリップ」「特集」「この人に聞く」となり、次のグループが「北から南から」「オピニオン」となる。いずれも「あまり読まない」の比率が3割未満であり、比較的読まれている。いずれの記事も自分の専門などへの関心のほか、知っている人が書いているといった要素も「時々読む」の回答につながっているのであろう。

Book Review(書評)はあまり読まれていない。半分は書籍紹介であるが、専門書というよりは教養的なものを書評対象としている。このジャンルではどうしても書店の偏りが避けられない。 理事会報告などの会務関係はあまり読まれない。議事録を加工して解説を加えることも考えられるが、進行中の法制度論などはタイミングも難しい。今後の課題である。


2.「この人に聞く」の聞き方は難しい

「この人に聞く」では、興味を持った人、印象に残った人をお聞きした。(複数回答)前会長の宮本忠長氏が97票(36%)、内田祥哉氏が71票(26%)で上位を占めた。小川三夫氏46票、坂本功氏38票、富田玲子氏34票、安藤邦廣氏32票がこれに続くが、19人の人の名前を掲載順に並べてお聞きしたので、事柄と名前が結びつかなかったり、読んだ時の記憶が名前では思い出さなかったり、というアンケート回答時の状況がありそうである。というのは、自由記述では、職人や伝統技能者の要望が多くあるが、実際に取り上げたそのジャンルの人の票数は多くはないからである。無名の人の名前を思い出してもらうのは難しい。学者、実務家、異分野の人など幅広く選定すべしという意見が多いと感じる。

「この人に聞く」の購読アンケート

表:「この人に聞く」について。興味を持った人、印象に残った人、あるいは内容に興味を持った人を回答してもらった(複数選択)

3.特集のテーマ

「良かった」「関心が持てた」特集を複数回答で求めた。これも会員の関心のありようで傾向は分散するが、図2にあるように一番に「地域における木造住宅の現在」94票(09/03)、二番目に「まちづくりにおける保存と再生」82票(09/04)、3番に「廃校の利活用」79票(10/03)、4番に「ニッポンの建築素材」77票(10/04)、5番に「温泉の名建築71票」(09/07)が上位を占めた。

このうち「温泉の名建築」は各県建築士会に問い合わせ、執筆と写真の提供をお願いした。あまり他で見られない情報ではないかと思われるが、単位会とのやり取りのある特集は今後も提案をしていきたい。

女性委員会には10/04号を、まちづくり委員会には10/06、07号の特集企画をお願いした。また08号は青年委員会の企画である。委員会活動は外部から見えにくく、活動結果も地味な報告になりがちである。女性委員会のように当初から情報発信を目的とする活動を組むことは考えられていいように思われる。

「大会へのいざない」と「大会報告」はその性格上必ずしも多くの読者を期待できないが、例えば、いわゆる屋台村や分科会に発表される事例は貴重な情報源でもある。主催者サイドのセレモニー、イベント、エクスカーション中心の報告ではカバーできないであろうが、この採録も今後の検討課題と思われる。しかし「廃校の利活用」は山形大会の屋台村からヒントを得たものである。

図2:特集について

4.連載講座

図3:連載講座等の購読状況

全般的によく読まれている連載講座であるが、中でも一昨年からの「伝統木造住宅の再生」はよく読まれた。数字上は「あまり読まなかった」の比率が高い「カラーユニバーサルデザイン」「還暦を迎える建築士法」「デジタル建築写真」は自由記述では評価する意見が多く寄せられた。まさに会員の多様な構成を反映した意見ということであろう。テーマの設定の難しいところである。要望として環境、設備、木構造など多くの期待が寄せられている。基礎から先端まで、繰り返し取り上げていく必要があると思われるが、先端、先端に限らず学問的に精緻になり、専門分化が激しいので、ある意味で原論になりがちであるので、実務に引き寄せて書いてもらえる人材を見つける必要があると感じている。